蛇口からグッバイハロー

ここの部分、色々変えたりしてみよう。はっくしゅん
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就活であちこち行ったり来たりの右往左往、無駄に減っていく資金を尻目にコウジは今日も女を抱いていた。
疲れた心を癒す為とは陳腐な言い訳で、帰りの電車に揺られた身体そのままに、コウジは腰を中心にその全身をリズム良く動かした。
彼の下でよだれを垂らす彼女の名はマリコ。
出会ったのは五年前、高校一年生の春だった。
不運な事故により、もう二年間ベッドから起き上がったことはない。
趣味は女性には珍しく昆虫採集だった。
特に蛾が好みで、よく花畑や森林、河原に行っては捕まえて、コウジに見せびらかしていた。
補足しておくと、別にコウジは昆虫に興味があるわけではない。ましてや蛾は。
嫌いでもないが、好きとは言い難い。
その程度の認知。
しかしコウジと昆虫には、切っても切れない縁があった。
もしもマリコが昆虫採集を趣味としていなかったら、コウジはきっと彼女を好きではなかったからだ。
一般に昆虫がどう認識されているか。
女性と昆虫。
その空間をも歪みかねない危険なバランス感覚は、コウジの性癖を存分に撹乱し、そして満たした。
「昆虫好きの女を抱いている」
この危うさ。
誰もがスポットライトを求める中で、一人舞台の端っこで背中を丸めて地面を凝視している女。
他に何も求めないその一見気持ち悪いともとれる健気さを、自分は凌駕するのだ。
背中を向けてしゃがみこんでいる女を、まず後ろから抱きしめる。
次に引き倒し、仰向けに横たわったその身体に覆い被さる。
両者にとってその時、仰向けとなった女の身体は、まさにアイデンティティである。
そこを強引にさらけ出させるのだ。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
コウジはまるで日頃の恨みを晴らすかのように、腰をマリコにぶつけた。
照明が落とされ、窓から覗き込む月の明かりのみが照らす情事。
部屋にはどこから入ってきたのか、一匹の蛾が舞っていた。
飛ぶことをあまり得意としない蛾は、よたよたと飛びつつもその羽を休めることは無かった。
目を閉じたコウジは思い出す。
付き合って一年が過ぎた大学入学前の春休み。
二人とも同じ大学に進む予定だった。
お互いの合格を電話で確認し合い、翌日にささやかな祝勝会を開く約束をしたところまでが彼らの幸せだった。
当日、コウジの携帯にかかってきた不幸の手紙。
なんとも価値の薄い響き、交通事故。
しかし当事者を襲う現実は決して薄いものではなかった。
駆けつけた彼の目に映ったのは、ベッドで瞼を閉じている彼女の姿だった。
意識不明の重体。
周りから聞いた話によると、彼女の信号不注意が原因だったらしい。
事故から数週間経ったある日、行ける時は必ず見舞に行っていたコウジが、いつものように彼女の手をとり自らの今日の出来事を頭で再生していると、
「・・・コウ・・・ジ・・・」
朧げな声が室内に響いた。
「マ、マリコ!」
驚嘆と歓喜と戸惑の入り混じった声がコウジの口から飛び出す。
「良かった・・・マリコ・・・!今、他の人を呼んでくるから」
「・・・待って・・・」
思わぬ制止にコウジの身体は硬直した。
「私・・・あの時、蝶を見たの・・・」
弱々しく揺らめく蝋燭の火のような声だった。
「私は・・・苦手だった・・・蝶が・・・だけど・・・だけ・・・ど・・」
震えだした声、彼女はポロポロと涙を零し始めた。
「憧れちゃった・・・コウジ・・・私は・・・蝶には・・・」
暫く無音が続き、次に出る言葉はついに無かった。
それ以来、彼女は再び深い眠りに就いたのだった。

果てたコウジは、その人形の如き肢体をようやく解放した。
射精後に必ず訪れるこの虚無の空気は、彼に「無」を与えてくれた。
全てからの解脱。
なんて、なんて男は醜い生き物なのだろう。
求め合う異性の間に生じるどうしようもない歪み。
彼女は、強引に眩しい照明に晒されたのだ。
昆虫を愛した少女を、人間を愛する女性に変えてしまった。
それをしたのは男である。
そしてそれを求めたのは女である。
人間を愛した女は、男には何の価値も無いモノだった。
交通事故の日、男はまだこのことに気付いてなかったが、女は薄々自身の変化を認めていた。
本当に翔んでいたのか、あるいは彼女が見た幻だったのか。
蝶に気を取られた彼女は、まるで道を外れたことを神に咎められたかのように事故に遭った。
「愛されたい」
普遍的な欲求が招いた皮肉。
あの日、一日だけ意識を取り戻した彼女が伝えた気持ち。
それによってようやく男は気付けたのだ。
彼女の変化に。
自分の欲求に。

モラトリアムを享受する彼は、きっとまた明日もここに来て、彼女を抱くだろう。
ギリギリのところで変化を止めた彼女は、まだ輝いていたから。
しかし彼はどうだろう。
今度は俺の番だな。
そんなことを思う。
いつか内定が決まって、入社する数週間前ごろに、俺は。
蝶を見るのだろう。

服を着、部屋を後にする彼。
飛び回っていた蛾は、月の明かりを受け続けるガラスの壁にようやく羽の休みを求めた。

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コメント
交通安全の話だね
2011/04/21 Thu| URL | すじこ
[ 編集 ]
心にもないことを言いますが、

「求」めるという字は、蛾の姿からきてるのかもしれないですね。
2011/04/21 Thu| URL | 鰤照
[ 編集 ]
スゲー!こんな文章も書いちゃうのですね!


蝶と蛾、姿形は似ていても蝶の方が優雅で華やかでそれでいて輝いてる。


昼間、スポットライトの当たらない蛾たちは、夜の蝶になりたくて自販機や街灯に群がるのですかね。


求める二人をぜひ救ってあげてください
2011/04/22 Fri| URL | テズルモズル
[ 編集 ]
>すじこさん

ちゃんと一時停止しなきゃいけないところでしない人が嫌いです。
とくに住宅が密集してるとことか。
うちの母親がそういう人なんですけど、「子供や自転車が飛び出してきたらどうすんの?」っていつも思います。
・・・って、交通安全の話じゃないですよ!
未開封の魚肉ソーセージを黒柳徹子に渡したら一体どんな反応するかという実験データです。(どこがだ)
ちなみに江角マキコに渡したら、腋に挟んでじっとしてました。
消臭効果があると思ったんでしょうね^^


>師匠さん

「蛾」という字は、キンタマの皺からきてるような気もしますね。
「求」=「蛾」=「キンタマ」
キンタマ=求
そ、そういうことか!だから女は意味無いのにフェラの時にキンタマを揉んだりしてくるのですね!
YES!オー蛾ズム!
ところでケツを拭いても拭いてもウンコが紙に付着し続ける現象をなんと呼べばいいんでしょう。
無限地獄。ですかね。
だとしたら、今僕は、無限地獄です。


>テズモズさん

夜の自販機に群がるという点でいえば、中学の時の僕も「蛾」でしたね!
実際に買ったことは無かったですが、中身を想像するだけで興奮してました!
逆に昼間などは、まるで興味が無いかのように意識しながら素通りしてましたね!
エロ本自販機!

創作話は自分の性癖を投影して書くと、割とスムーズに指が動くので、僕は官能小説家が合ってるのかもしれませんw(文章力とか語彙は置いといて)
今度はメガネかけた女子高生を電車で痴漢する小説書くのでお楽しみに!(書きません!)
2011/04/24 Sun| URL | マウスメロン。
[ 編集 ]
最高やな。
やはり君は抜群に文才がある。
名古屋オフかなんかの時家まで押しかけようそうしよう
2011/04/29 Fri| URL | ぱとらっこ
[ 編集 ]
>ぱとらっこさん

ぱとらっこさんがいっぱい家に押しかけてくれれば、それによって家のゴミが押し出されると思うので、是非お願いしたいです!
母親のメガネ(老眼鏡)をかけて待ってます。
それにしてもシューアイスって美味いですよね。
シューの中にアイス入ってるだけなのに、なんであんなに美味しいのか。
これを解明するために喪黒福造はあの有名な「ドーン」を発明したそうです。(指を突っ込むだけ)
ドラえもんとかパーマンとかの絵柄って、指が風船みたいですよね!
ねじって十二支作りたいです^^(指増えてる!)
2011/05/03 Tue| URL | マウスメロン。
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